依存症治療はもはや、「対高度資本主義社会」の様相を呈している
「アルコール依存症は、産業革命以降の産物」と言ったのは、確か、精神科医なだいなだであったと思う。というのも、酒というものは元々自然が長時間かけて世にもたらす高価なものであり、一般人が日々の生活でそうそう口にできる物ではなかった。産業革命により、アルコールが工場で大量生産されるようになってから、一般人の日常生活に入り込むようになり、歯止めがかからなくなった。そこで昼間からでも、アルコールに耽溺する人が...
View Article「現代型・自尊感情の低落」とは何か ~摂食障害(過食症・拒食症)・醜形恐怖症・自己臭恐怖症治療から見えてくるもの~
あいち熊木クリニックには、摂食障害専門外来がある。 対象となる疾患は、摂食障害(過食症・拒食症)のみならず、醜形恐怖症や自己臭恐怖症といった、思春期・青年期に特有の疾患である。 そして、そこにやってくるのは主に思春期・青年期の女子である(もちろん家族が同伴することもある)が、彼女達の自尊感情の低さには驚かされることが多い。 それも、見た目だけではなかなか分からない。...
View Article<熊木による書籍紹介> 『自閉症スペクトラムの精神病理』内海健(医学書院)
『自閉症スペクトラムの精神病理』内海健(医学書院) goo.gl/bM11rt 本書は、青年期・成人期の「自閉症スペクトラム」(成人ASD。以下、ASDとする)を対象とした精神病理学的考察である。 ASDについては、過去にも重要な著作が刊行されている。 それは、カナーやアスペルガーをはじめとする医師・研究者の著作、ASD者の自伝、過去の傑物の病跡などである。...
View Articleアロパノール(全薬工業)についての所感
最近、しばしばTV-CMで見かけるアロパノールという商品について、コメントしたい。 宣伝文句は「緊張・イライラ・不安など、ストレス社会に疲れた心へのドリンク剤」である。 向精神薬はすべて、市販できないことになっているはずなのに、果たしてどのような薬物か、と疑問に思っていた。 調べてみると、何のことはない、漢方の「抑肝散」である。...
View Article自宅で暴れまわる我が子(「発達障害」<ADHD/アスペルガーなど>についての臨床相談)
<『もう悩まなくていい ~精神科医熊木徹夫の公開悩み相談~』(幻冬舎)より> Q:6歳の息子のことでお尋ねします。 出産時は正常で、小さいころに大きな病気は経験していません。ただ、夜泣きがひどく、手のかかる子でした。物心ついたころからは、親に対してかなり無理な注文をして、それがかなわないと突然かんしゃくを起こすことが多くなりました。...
View ArticlePMS(生理前症候群/月経前症候群)をめぐる男女間のパートナーシップ
あなたは、PMS(Premenstrual Syndrome)をご存知だろうか。 日本語では、生理前症候群(月経前症候群)という。 症状は、実に多岐にわたる。 以下に、挙げてみることにしたい。 ((PMSの症状)) (1:精神症状。心療内科で対応可能なもの) イライラ(焦燥感)・精神不安定・攻撃性 食欲増加(特に甘い物)・体重増加...
View Article”しつけ”の指弾・根絶がもたらすであろう、両親のジレンマ
北海道で”派手な迷子”があり、連日このことについて報道されていました。 (報道内容の詳細については、省きます) 後に、まだ寒い北海道のこの時期に、男の子が奇跡的に一週間も生き延びていたとの報がもたらされ、 私も本当に安堵しました。 もちろん一番安堵されたのは、ご家族(特にこの子のお父さん)でしょう。 しかし、その背後で大きくため息をついた方々も大勢いるのではないかと考えました。...
View Article「相模原市・障害者施設殺傷事件」によせて、思うこと
まず、被害者の方々に哀悼の意を表したい。 この事件の一報に触れたとき、真っ先に思い浮かべたのは、 ヒトラー・ナチスの優生思想に基づく障害者大量抹殺、および池田小学校大量虐殺事件である。 mainichi.jp/articles/20160728/k00/00e/040/221000c...
View Articleトゥレット症候群における「汚言症」は、無意識の産物か ~「空気は読めるが、あえて壊す」タブー侵犯がもたらすもの~
私はかつて、 「重症チック症・多発性チック症(および、トゥレット症候群・どもり(吃音症)・抜毛癖(抜毛症・トリコチロマニア)・爪かみ・歯ぎしり・貧乏ゆすり)の薬物療法(漢方薬・精神科薬物)」という一文を書いたのですが、この反響が大変大きく、これまでこれを読んで随分多くの方が、あいち熊木クリニックを訪ねられました。...
View Article「夏バテ・秋バテ防止のための、生活改善ご提案あれこれ」
2016.夏、アメリカのNASAが「史上最強の猛暑が、世界中を襲う」と通告しました。 ほんの20-30年前には、「夜中にクーラーを使うなど贅沢。夜風を入れればそれでいい」というお年寄りも多くおられました。 しかし、今そのようなことをすると、睡眠中に熱中症になる危険さえあるという異常気象です。...
View Article「勇気と感動をありがとう」
こんにちは、熊木です。 2週間に渡るリオデジャネイロ・オリンピックは終わり、さらにパラリンピックに移行していきます。 4年に一度の特別な大会であり、その金メダルは最高の栄誉であるため、 どんな競技においても、全身全霊を込めたプレーが展開されます。...
View Articleストレスチェック、その後の裏事情
最近ようやく社会全体に浸透してきたかに見える「ストレスチェック」ですが、運用過程でいくつかの懸念材料が見えてきています。 あいち熊木クリニック(心療内科・精神科)の「ビジネスマン(ストレスチェック)外来」においても、それらを垣間見ることができます。 ここでは、そのいくつかをご提示することとします。 さて、ここで再度確認です。 そもそも「ストレスチェック」とは、何か。...
View Article書評『コンビニ人間』村田 沙耶香(文藝春秋)
goo.gl/GfG9k6 珍しく、話題になったばかりの芥川賞受賞作を読んでみた。 コンビニだけに繊細に適応してきた主人公は、世間的には常識外れの人物だが、彼女自身そのことがなかなか了解できない。 かといって、そこで居直るでなく、コンビニという世界における”正常化”の波によって排除されないよう、懸命に秩序正しく生きている。...
View Articleイップスの克服に汗を流す「地上の星」
「プロ野球トライアウト外伝。「イップス地獄」から這い上がった男たち」 sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/npb/2016/11/17/post_789/index.php 常日頃、イップスを抱えた選手を前にしている私にとり、この「イップス地獄」は全く他人事ではない。...
View Article「呑気症」との自覚に至るのに、10年もの年月がかかる?
「呑気」(どんき)っていう言葉、ご存知ですか? 空気を呑む(のむ)ことを指して、そう言います。 緊張すると、「息を呑む」といいますね。 一時的に、無呼吸の状態になり、ゴクリと唾を飲み込むようなこと、誰しも経験があると思います。 しかし、よほどの緊張状態でない限り、息を呑む瞬間に自覚的になることは難しいものです。...
View Articleパニック障害を引き起こしやすい「滅私奉公的性格」
パニック障害について、疾患の概略は、以下のところで説明しています。 「『トンネルに入りゆく恐怖』 (「パニック障害」についての臨床相談)」...
View Article精神科薬物を服薬中の男性、胎児への影響は?
近頃よく、次のような質問を受けます。 それは、男性患者さんからのものです。 「今、精神科薬物を服薬中だけど、妻が妊娠することを考えたとき、自分も服薬を止めなくてもいいのでしょうか。(精神科薬物の影響が、胎児に及ばないのでしょうか)」 なるほど、心配されるわけは分かります。...
View Article~受験日前夜の君へ~(すべての受験生に贈る言葉)
今、君はこれからの人生が決まるかもしれない一日を前にして・・ 士気を鼓舞し、勇猛果敢に振る舞っているかもしれない 努めて冷静を装い、平常心を保てているかもしれない あるいは・・ 興奮でとても眠れそうになく、焦りが募っているかもしれない 震えが止まらず、逃げ出したくなっているかもしれない 僕は、そういう焦って逃げ出したくなっているようなひとに向けて、このメッセージを書いている...
View Articleチック症・発達障害の生きづらさ ~<KY(空気よめない)>と<もうひとつのKY(空気を読みすぎる)>が混在するのはなぜか~
先に、重症チック症・トゥレット障害の薬物療法について書きました。 www.dr-kumaki.net/kimo/%E9%87%8D%E7%97%87%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E8%96%AC%E7%89%A9%E7%99%82%E6%B3%95/ このようなチックの頻発を招く人は、「発達障害」にカテゴライズされる人が多いといえます。...
View Article抜毛症女子の母親は、なぜ物悲しいのか ~抜毛症(抜毛癖・トリコチロマニア)の潜在的意味と治療・代償行動について~
近頃、あいち熊木クリニックで受診が増えているのが、抜毛症(抜毛癖)の患者さんです。 意識的にか、無意識的にか、自らの髪の毛をぷちんぷちんと引き抜いてしまうというものです。 初発は、小学校時代が圧倒的多いですが、中学・高校と年次を重ねても止められないケースも増えています。 全体的には、女子に圧倒的に多く見られますが、時には男子においても見られます。...
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